2013年09月03日

D.S.

アルバムHIStoryの中の「怪曲」。この曲、性虐待裁判のときの検事、トーマス(トム)・スネトンのことを曲にしちゃったものだといわれてる。

HIStory自体、物議を醸しそうな曲が目白押し。歌詞カードついてない曲が多い。けどこの曲は珍しく歌詞カードが入っている。そして、歌詞カードによればこの曲はやはり、T.S.ではなくて、D.S.なのだ。にもかかわらず、曲を聴くと、普通はDの発音に聞こえるのに、まんま実在の検事の名前に聞こえてしまう個所があって吹き出してしまう。TもDも発音はとっても似てる。やっぱりこれは、あきらかに、トーマス・スネトンを曲にしちゃった、誰もが聞くとそう思うように誘導している曲にはちがいないだろう。

で、実際、最初は曲名もT.S.だったらしく、はっきりT.S.とかかれた直筆の原稿が存在するのだそうだ。

でも、ずっと長いこと、この曲をきいても、何のためにそんなことをしたのか、さっぱりわからなかった。恨みのため?抗議のため?それにしては明るい曲調に違和感がある。そういうくらい感情はどうしてもこの曲から感じられない。だから何か違う気がずっとしてた。もともと英語が得意で訳してるわけじゃない。曲の背景にある感情やシチュエーションがわからないと私はまったく訳せない。それがぜんぜんつかめなくて、訳そうにもまったく手が付かなかったのがこの曲。

でも、でもある日突然ひらめいた。そしてやっと言葉がでてきた。

They wanna get my ass dead or alive
俺をやろうと命がけ
You know he really tried to take me down by surprise
不意打ち食らわせようと本気で狙ってやがるんだ


get my ass は俺を追い込む、不利な立場に追いやる、ということだろう。by supriseは不意打ち。
俺を執拗に狙ってなんとかはめようと虎視眈々と狙ってる油断ならねえやつがいるんだ。

I bet he missioned with the CIA
絶対CIAのミッションにちがいねえ
He don't do half what he say
やつは言ったことはやり遂げずにおかねえ


尋常じゃないこのしつこさ、まるで国家機密でも追ってるような騒ぎだな。
絶対CIAかなんかの差し金にちがいないぜ。
しかもやつときたら、言ったことは必ずやり遂げる、やつに情け容赦や妥協はないぜ。

言わんとしてることはこんな感じ。

本当にCIAのミッションだったかどうかは知らないけれど、とにかくやり方が汚く、執拗で半端ない。それがまるで一民間人を相手にするような生易しいやり口じゃないので、「俺はまるで、CIAが携わるような、国家間のスパイの争いにでも巻き込まれてしまったようだ」そう感じたんだろう。それが、I bet he missioned with the CIAなんて表現になった、そういうことだと思う。

He don't do half what he say は、彼は彼が言うことを半分だけやったりしない、つまり全部やってしまう。必ずやり遂げる、という意味だと思う。そうじゃないと曲にあわない。この曲は本来真実を突き詰める役割のはずの男が、自分の利益のために正義もへったくれもなく、誰も止めることができない大暴走をしてる様子を描いてる。そして、ここは「間違ってようとなんだろうと関係ない。やつは自分が言ったことは、どんな卑劣な手段を使ってもやり遂げるんだ」という意味だと思うのだ。

what he say 彼が言うこと、も意味深だ。この人、間違ってた、とは絶対みとめない。自分が言ったことは、すべてどんな手を使ってでも「事実にしてしまう」のだ。そんなのが検事だったら恐ろしいことこの上ないけど、それは彼がみた法廷の姿、彼の体験したことなのだろう。

Dom Sheldon is a cold man
ドン・シェルドンは非情な男
Dom Sheldon is a cold man
ドン・シェルドンは非情な男
Dom Sheldon is a cold man
ドン・シェルドンは非情な男
Dom Sheldon is a cold man
ドン・シェルドンは非情な男


どんな卑劣な手を使っても自分の言葉を真実にしていまう。そこに容赦はまったくない。ドン・シェルドンはそんな非情な男。人間性なんかかけらも持ってない男。

He's out shock in every single way
やることなすこと桁はずれだぜ
He'll stop at nothing just to get his political say
発言力を高めるためさ 誰もやつを止められねえ
He think he bad because he's BSTA
BSTAだからかっこいいと思ってやがる


やつのやることなすことは、常識なんかじゃ測れない。いつも、必ず、そうくるか?と思うような手を打ってきやがる。自分の政治的な発言力、影響力を高めるためにまっしぐら。やつを止められるものは何もない。

そういう感じ。つくづく、、、検事になってほしくない人物像、、、。

BSTAは意味不明。けど、一番支持されている説は BSTA は SBDA:Santa Barbara District Attorney(サンタバーバラ州検察官)のもじりだという説。TとDは発音が似ている。曲をDSにしたように、ここではDをTに入れ替えていると考え、頭のSBをひっくり返した、という解釈だ。SBDAはもちろん、件の検事、トーマス・スネトンの肩書き。

I bet he never had a social life anyway
どっちにしろ、友達なんかいないに違いねえ
You think he brother with the KKK?
KKKにも関係してるかも知れねえな
I know his mother never taught him right anyway
やっていいことがあるなんてママに教わったこともないんだぜ
He want your vote just to remain TA
TAに残るため、やつには票が必要なのさ
He don't do half what he say
やつは言ったことはやり遂げずにおかねえ


I bet he never had a social life anywayは、とにかく、彼は社会生活なんてまったく経験したことがないにちがいないと思う、という意味。友人だったり、家族だったり、仲間だったり。そいういう人とのつながり=social lifeなんて、あの男は絶対経験がないに違いない。でなきゃこんなことが平気で出来るわけがない、そういう意味だろう。

そして、KKKにも関係あるかも。きっと親からも、人として正しいこと、なんて教わったことがないんだろう、とつづく。

TAはおそらくDA:District Attorney=検察官だといわれている。アメリカの州検察官は公選制、つまり、選挙で選ばれなければならないことが多い。で、有名になって顔と名前を売っとくことが必要なのだ。

Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man


Dom S. Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man


この辺から発音が怪しげになる。どんどん発言がDではなく、Tになっていく。
特に強調される最初の1行はTにしか聞こえなくなっていて吹いてしまう。あーあ、やっちゃったのね、、って感じ。

でもって、ご丁寧なとどめに、Dom S.とわざわざうたってる。これ、先頭のDをTで発音して続けて読むとまんま発音はトーマスになってしまう。

(Slash!)


ここで名ギタリスト、スラッシュの間奏。軽快なソロが挟まる。マイケルの叫び声も「行け〜!」っていい感じ。

Does he send letters to the FBI?
FBIにも手紙書いてるのかね?
Did he say to either do it or die?
「やらなければ死ね」とでも言ったかね?


FBIにも手紙書いて、「お前ら俺の言うことを聞くか、さもなくば死ぬかだ」って脅したのかもしれないな。

Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man


Dom S. Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man
Dom Sheldon is a cold man

(繰り返し)


トム・スネトン検事、1993年の最初の幼児性虐待裁判の時の担当検事となり、マイケル・ジャクソンに全裸での取り調べを命じた張本人、かなり強引な取り調べてでプライド・人権をズタズタにされた、それが起訴された側の思いだったのだと思う。

けれどその割に、この曲からは怨念めいた暗い感情を感じない不思議。

インスピレーションをくれたのは十一面観音像。突飛に聞こえると思うけれど。

仏教によれば、人間は天、人間、修羅、畜生、餓鬼、地獄の六道、六つの世界を輪廻している。その六道でさまよい、悩める人を救うのが観音菩薩。観音はたくさんいるのだけれど、うち、十一面観音は、争いをやめられない「修羅」道に落ちた人の救済担当。すべてを統合する神々しい顔、頑張ってる人を激励する顔、くじけそうな人を叱責する顔、など名前の通り11個の顔をもっていて、救わなきゃいけない人にあわせて使い分ける。そんな十一面観音が、本当の悪に対峙するときの顔は、なんと大爆笑。

この顔、十一面観音の真後ろについていて普通は見えないのだが、たまたま見る機会があって、それをみたときに思った。ああ、これ、D.S.だ、と。悪に対して怒るでも、戦うでもなく、大爆笑で笑い飛ばす。ばっかなことしてるなあ、あほだなあ、、、。それが観音様の悪人への対峙の仕方。この曲もたぶん同じ。物理的に殺されたわけじゃないけれど、社会的にも精神的にも文字通り殺され、壊されかかった。そんな相手に対して戦うでも、怒るでもなく、ただ、ただ、徹底的に笑い飛ばしたのだ。

そう思うと、この曲の作りがわかるような気がする。曲の冒頭で、赤ん坊が泣いている。この曲はその子をあやすために歌われるマザーグース。ロボットのように感情も人間らしい生活も持たず、冷酷に付け狙う怖いおじさんを描写したナンセンスソング。そんな可哀想な人物を、いかにも楽しげな曲とかっこいいギターでおちょくって笑い飛ばしているのだ。

そこまで来るには、相当な苦労も葛藤もあったと思うけれど、怒りに自分を沈めてしまえば、自分が怒りに乗っ取られていくだけ。彼は強靭な精神力でそこを乗り越え、笑い飛ばす境地に達したのではないかと思う。


posted by LightWing at 21:47| Comment(0) | TrackBack(0) | HIStory | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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