2013年09月04日

Shout:叫び(2001年)

※タイトル訳はオリジナル

ひさびさにものすごく重たかった。

肌で感じる終わりの始まり。頻発する異常な事態、世の中を覆う狂気、魂が拷問をされているような地獄を生きながら、なぜか不気味に淡々と過ぎていく日々。終末に向け時計の針は進む。それでも夜明けを見るために我々は生きていく。

強烈な曲。怖い曲。彼が吼えている。強烈な怒りで吼えながら、訴えている。わかるだろうか、彼の叫び。この曲は、彼の生涯最後の、戦士の顔の彼の曲だと思う。

かなり、知る人ぞ知る、という曲じゃないかと思う。アルバムには入っていない。本当はInvincibleにいれるはずだった曲なのに、最後の最後ではずされたそうだ。何が彼をそうさせたのだろう。

結局、Cryがシングルカットされるときに、カップリング曲としてリリースされた。


SCREAMもSHOUTも日本語では「叫び」。SCREAMは「きーーーーーーーぃ!!」っていう金切り声。ムンクの「さけび」はSCREAM。狂いそうな心のカタルシスの叫び。無意識の叫び。対してSHOUTの本来の意味は「怒鳴る」。人に聞こえるように、注意を引くように、大声を出すこと。ここでは、「うおぉぉぉぉぉぉぉーーー!!」って感じの雄叫びじゃないかと思う。激しい怒りと闘争心の爆発の叫び。意識的な、他の人に届けるための叫び。

SCREAMもSHUOTもモチーフには共通するものがある。どちらも狂気の世界と、そこにあって叫びだそうになる彼が題材。HIStoryのSCREAMは、InvincibleでSHOUTになった。背景には、彼の心理と、世界の状況があると思う。

This is not your ordinary record
これは通常のレコードではない。


いきなり変なセリフが入る。

意味なくこんなセリフを入れるとは思えない。何か彼の意図があるように感じる。
どうとでも取れそうな言葉。受けった人により解釈は異なると思う。

ordinaryは普通の、通常の。では、普通でない、通常でない、とはどういう意味か?
そして、レコード。これが何を指すと考えるかが鍵なんだろう。もうCDの時代にあえてレコード。単に音楽レコードととれば、これはと特別のレコードだ、というだけになるんだろうと思うけど、そう言ってるように見せかけて、やはり違う意味かくしてるように思う。

レコードは記録、履歴が元の意味。そっちで取れば、これは尋常な行動履歴ではない、つまり、異常な行動だ、という意味にもとれる。

実際に意図した意味はこっちではないかと思う。通常でない、の意味をどう受け止めるかがこの曲の受け取り方を決める。

Ignorance of people purchasing diamonds and necklaces
ダイヤモンドやネックレスに群がる人々の無知
And barely able to keep the payments up on their lessons
授業料を払い続けられることは稀
And enrolled in a class and don't know who the professor is
クラス名簿に載せられいても、誰が教授なのかも知らない。
How low people go for the dough and make a mess of things
人々はどこまで平然としていられるのだろう?
金が混乱を生むこの状況に


ダイヤやアクセサリを買う金は惜しまないのに、学ぶことにはお金を惜しむ無知な人々。学校の授業料は払いつづけられず、授業を取っているのに、教授の顔さえ知らぬ、無知で学ばぬ人々。

how low <主語> go は、どこまで冷静でいられるのか?冷静さを失わず耐えられるのか?

Kids are murderin' other kids for the fun of it
子どもが子どもを楽しみのために殺している
Instead of using their mind or their fist they put a gun in it
理性や拳を使う替わりに彼等は銃を撃ちこむ
Want to be a part of a clique, don't know who's runnin' it
派閥に入れてもらいたがるが誰がそれを支配してるかを知らない
Tragedy on top of tragedy, you know it's killing me
悲劇の中の悲劇、わかるか?それが俺を締め上げている


子供が他の子を平気で殺す。楽しいから。
何かと人々は大樹の影に入りたがり、群れたがる。しかし、その群れは誰がなんのために作っているのかを考えてみることも無い。そして支配者に利用されていくんだろう。

So many people in agony, this shouldn't have to be
苦悶に喘ぐ大勢の人びと、こんなことが強いられてはならない
Too busy focusing on ourselves and not His Majesty
自分のことに忙しすぎて神を顧みることもない
There has to be some type of change for this day and age
そうした何らかの変化が今日仕掛けられてる
We gotta rearrange and flip the page
俺達はもう一度やり直してページをめくらなくてはならない


have to は、しなければならない、なんだけど、義務として課せられる、強制的に化せられる、という感じ。
this shouldn't have to beはこのようなこと(たくさんの人が苦悶に喘ぐこと)が強制的に課せられてはならない、ということ。、、、、、今、強制的に課せられている苦悶はいくらでもある。

There has to beは、起こるべくして起こっている、というようなニュアンスだと思う。その変化は強いられているのだ、という意味。だから仕掛けられている、という言葉を使った。

Living encaged like animals and cannibals
動物か生贄のようにケージに入れられて生きている
Eatin' each other alive just to survive the nine to five
9時5時を生き抜くためだけに共食いをしあってる
Every single day is trouble while we struggle and strive
もがき、努力してもその日その日は問題だらけ
And peace of mind is hard to find
心の平穏は見出し難い


cannibalは食人種なんだけど、結局、生き物としては尊重されず、殺されて消費されてしまう存在のことをここでは言っていると思うので、あまり日本語として違和感のない言葉を選んだ。

9時5時を生き抜く、とは、食い扶持を稼ぐ、ということだろう。仕事のために、倫理に目をつぶり、そうし田無数の人々が、恐ろしい方向に時代を進めている。自分が生きていくために、他の人を犠牲にする人々。他人事じゃない。いらないもの、悪いものとわかっていながら売りつけ、あるいは、仲間を欺き、搾取し、陥れる。

そんなことをして、競争に負けないように、生き残るために、と必死で努力するのに、次から次へと問題はおきる。平穏な日々など永久に訪れそうにない。

I want to shout
俺は叫びたい!
Throw my hands up and shout
両手を投げ出して叫びたい!
What's this madness all about
この狂気は一体何なんだ!
All this makes me want to shout
全てが俺を叫びたい衝動に駆り立てる


Throw my hands upは、お手上げ、絶望、というイメージ。それも入っているだろうけれど、ここでは両手を拳か、平手にして、机をガンッと叩きつける感じだと思う。激しい怒り、深い怒りの表現。

All this makes me want to shoutは本来は、全てが俺を叫びたくさせる、なのだけれど、曲の雰囲気から少し強い言葉にした。

You know it makes me want to shout
わかるか?叫びたくなるんだよ!
Throw my hands up and shout
両手を投げ出して叫びたい!
What's this madness all about
この狂気は一体何なんだ!
All this makes me want to shout
全てが俺を叫びたい衝動に駆り立てる
Come on, now
全く、いい加減にしてくれよ!

Problems, complications and accusations
問題、紛争、非難
Dividing the nations and races of empty faces
国家・人種という顔無きものに分裂して
A war is taking place, no substitution for restitution
戦争が起こっている。賠償を求め、代替案は無い。
The only solution for peace is increasing the height of your spirituality
平和への唯一の解決策は、自らの精神性を高めていくこと。


個は集まると別物に変質する。一人一人は善であっても集まれば巨悪として動いたりもする。集団となったとたんに誰も責任をとらない、誰のためにもならない、文字通り得体(正体)の知れない不気味な存在に成り下がる。利益を受ける人ひとりひとりの顔は見えず、誰の意思なのかもわからず、犠牲となる人も一人一人で認識されない。それが「顔無き」集団。

そうした顔無き集団同士で戦争が起こっているが、平和に収束するための解決策はない。

唯一の解決手段は、ひとりひとりが精神性を高めていくことしかないのだ。愛をとりもどし、倫理を取り戻し、知性を取り戻し、真実を求め、声を上げ、動いていくこと。それしかないのだ。

Masses of minds are shrouded, clouded visions
心の混乱は覆い隠され、先行きは不透明
Deceptions and indecision, no faith or religion
欺瞞、先送り、誠実さや信念は無い
How we're livin' The clock is tickin',
どうやって生きていけばいい?時計の針は進んでいく
The end is comin', there'll be no warning
終わりが近づきつつある、警告すらないままに
But we live to see the dawn,
けれど俺たちは夜明けを見るために生きる


それなのに、実際の人々の心は混乱しており、しかも混乱していること自体たくみに隠されている。

様々な問題が取り巻いてるのに、きちんと立ち向かうことも無いまま、事態は刻々と進行している。破滅の時が近づいている。それはきっとある日突然来るだろう。、、、、まるで、ひとごとと思えない危機感が怖い。

indecisionは文字通りは優柔不断、なのだけれど、結局今の世界の政治状況のことを考えると、ぴったりなのは、この言葉だと思った。

それでも、私たちは、絶望に打ちひしがれて手をこまねくことなく、夜明けを信じて、それを見るために生きていくのだ。そうするべきなのだ。

How can we preach
どうしたら伝えられるのか
When all we make this world to be
俺たち皆が、こんな世界にしてるのだということを
Is a living hell torturing our minds
生きることは、己の魂を苦悶させる地獄ではないのか?
We all must unite to turn darkness to light
闇を光に変えるため、俺たちは皆力を合わせねばならなない
And the love in our hearts will shine
そうすれば、心の中の愛は光を取り戻すだろう


そんな世の中だと思っていない人もいる。そんな世の中にしたのは自分ではないと思っている「被害者」もいる。けれど、こんな世の中にしてしまったのは、まぎれものなく、個を捨て、顔無き集団に埋没したひとりひとりなのだ。その日を凌ぐために食い合いをし、能力が無い・努力が足りない、などの様々な理由をつけて他社を踏みつけ、自分だけが生き延びようとした、学ぶこともなく自分の頭で考えることも無く、声を上げることもしない、皆一人一人がこれに加担しているのだ。

けれど、それをどうやってわかってもらえるのか?How can we preach のpreachは文字通りには説教する、ということ。たぶん、宗教的な意味で真実を伝えるということだ。

これは、前の段落の、平和への唯一の解決策が精神性を高めることだ、という表現と裏表。自分たちの精神性を反映した結果がこの社会。だからこそ、根本的で唯一の解決策は、精神性を高めることだと、彼は説く。

We're disconnected from love
愛から切り離され
We're disrespecting each other
お互いに蔑みあっている
What happened to protecting each other
助けあう、という気持ちに何がおきているのか
Poisoned your body and your soul for a minute of pleasure
一瞬の快楽のために己が身と魂を毒に晒す
But the damage that you've done is gonna last forever
けれど自らがなしたことのダメージは永久に続く


便利だから、楽しいから、未来を先取りし、様々なものを壊し、様々なものに目をつぶる。しかし、一度やってしまったことは、己が身と己が周りの環境にずっととどまり続け、悪影響を与え続ける。本当にその選択は、将来の世代にとって最善のものなのか。次の世代のためによい世の中にする、という Heal the world の愛と対極の強欲。

Babies being born in the world
新しい命がこの世界に生まれている
Already drug addicted and afflicted
既に薬物に依存し、苦しめられながら。
Family values are contradicted
家族の価値は否定されている。
Ashes to ashes, dust to dust
灰また灰、塵また塵
The pressure's building and I've had enough
抑圧は積みあがっている。俺はもう充分だ。


新しく生まれた子供たちは、生まれ堕ちたその瞬間から、汚染された環境に投げ出される。家族の価値は否定され、子を育み、家族を守るという行動様式は否定され続けてきた。それが何を起したか。そういう考えがどういう社会を生んだか。

彼の怒りが、理解できるだろうか。

I want to shout
Throw my hands up and shout
What's this madness all about
All this makes me want to shout

You know it makes me want to shout
Throw my hands up and shout
What's this madness all about
All this makes me want to shout
Come on, now
Shout

Problems, complications and accusations
Dividing the nations and races of empty faces
A war is taking place, no substitution for restitution
The only solution for peace is increasing the height of your spirituality

Masses of minds are shrouded, clouded visions
Deceptions and indecision, no faith or religion
How we're livin' The clock is tickin', the end is comin', there'll be no warning
But we live to see the dawn

I want to shout
Throw my hands up and shout
What's this madness all about
All this makes me want to shout

You know it makes me want to shout
Throw my hands up and shout
What's this madness all about
All this makes me want to shout
Come on, now

Shout Shout Shout Shout

Shout
Throw my hands up and shout
What's this madness all about
All this makes me want to shout

You know it makes me want to shout
Throw my hands up and shout
What's this madness all about
All this makes me want to shout
Come on, now
Shout


かなり強いメッセージソング。曲調はパンク。内容からパンク以外に適切な表現がなかったんじゃないだろうか。最後の望みを残してはいるが、かなり救いのない内容の詩。彼の危機感がひしひしと伝わる詩。アルバムに入っていれば、間違いなく一番激しい曲となっただろう。2000wattsに雰囲気こそ類似するところがあるけど、メッセージ性が全く異なる。代わりに入ったのは You Are My Life。もう、アルバムのメッセージ事態が変わりそうな大転換。なぜなのか、何が彼をそうさせたのか。

結果としてリリースされたCryとのカップリングは意味深。裏表なのはどちらも見ているものは同じであるからだと思う。

この曲の20年あまり前に、若きマイケル・ジャクソンが出した局、JAMと対比すると悲しくなってしまう。人の思考様式を変えながら、時代は移っていた。そのころから彼は、このままほっとけば、何度も恐れに恐怖する世の中になると、警告していた。ほかに頼って自分を否定するのではなく、自分の中に軸を持ち、果敢にこの世の中にまざって仕掛けていけ、黙っているのではなく、自分で動いていけ、といっていた。

しかし、結果として時代は動くことはなく、そのまま20年たって、恐れに恐怖する世の中になりつつあるときの叫びがこの歌。そう思う。

悲しくなってしまった。ひとごとと思えないから。時は刻々と迫るけれど、信じるものを抱いて、進めていくしかないんだろう。

posted by LightWing at 11:57| その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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