2013年07月05日

Smile(1936年、1995年covered by MJ)

もともとは1936年のチャーリー・チャップリンの映画モダンタイムズの主題歌。作曲もチャップリン。だけど最初はインストラメンタルで、歌詞はついていなかった。

モダンタイムズはチャーリー・チャップリンの代表作。喜劇なのだけれど、扱う題材は重たい。資本主義のもと、機械のように扱われた主人公、その主人公と意気投合した少女。けれど彼ら二人に決して幸せは訪れないのだ。何度も、何度も、彼らは叩きのめされる。使われて、捨てられて。その繰り返し。そんな暗く、重たいテーマが、すべてコメディとして描かれる。

ラストシーン、絶望した少女を、チャップリンが励まし、チャップリンとともに去っていく。バックに流れるのが「スマイル」。どんなに叩きのめされても、笑え、笑って立ち上がれ。希望を見失うことなく前に進め。この歌は、そういう、逆境と絶望の中の導きの歌なのだ。

それをマイケル・ジャクソンが、彼にしかだせない美しい声で、シンプルなアレンジで歌う。まるで女性のような、やわらかく、伸びのある、艶やかな声。知らない人なら、彼だと気づかないかもしれない。歌手としてのキャリアで培った、超一流の歌唱力を余すことなく注ぎ込んだ歌に思わず聞きほれる。

スマイル、とは、諦めず、希望を捨てずにいよう、悲しみや恐れや、そうした感情にとらわれないようにしよう、ということなんだと思う。悲しみや恐れを見ないようにするのではなくて、それをきちんと受け止めて、なおかつ、笑う。逃げないで、諦めず、希望を捨てずに立っていよう、そういう決意なのだとおもう。

もう和訳は山ほどでているけれど。一応。

Smile, though your heart is aching
笑って、たとえ心が痛んでいても
Smile, even though it's breaking
笑って、たとえ辛いときでも
When there are clouds in the sky
空には雲がたれこめていても
You'll get by...
君は乗り越えていける、、、

If you smile with your fear and sorrow
怖くても悲しくても 君が笑うなら
Smile and maybe tomorrow
笑って、多分明日は
You'll find that life is still worthwhile if you'll just...
それでも人生は価値あるものだってわかるよ、もし君がただ、、、

Light up your face with gladness
顔を喜びで輝かせ
Hide every trace of sadness
悲しみの跡はすべて隠して
Although a tear may be ever so near
たとえ今にも涙がこぼれそうだとしても
That's the time you must keep on trying
そんなときこそがんばらなくちゃだめだよ
Smile, what's the use of crying
笑って、泣いてても仕方ない
You'll find that life is still worthwhile If you'll just...
それでも人生は価値あるものだってわかるよ、もし君がただ、、、

Smile, though your heart is aching
Smile, even though it's breaking
When there are clouds in the sky
You'll get by...

If you smile
Through your fear and sorrow
Smile and maybe tomorrow
You'll find that life is still worthwhile
If you'll just Smile...

That's the time you must keep on trying
Smile, what's the use of crying
You'll find that life is still worthwhile
If you'll just Smile


美しいけれど、悲愴な歌。そしてこれがマイケル・ジャクソンのお気に入りの歌。

映画のラストではインストラメンタルだったこの曲に1956年歌詞がつけられた。そのとき、歌詞に併せて曲名も「スマイル」と名づけられた。

その、美しく、けれど悲しい曲を、マイケルジャクソンはアルバムHIStoryの最後に持ってきた。

HIStoryは、彼が現代社会の暴力の中でたたかれて、叩きのめされて、その中からぼろぼろになっても立ち上がって闘ってきた軌跡としての意味づけをたぶんに含んだアルバム。その姿はモダンタイムズのチャップリンに重ならないか。そして、モダンタイムズと同様に、彼はこの曲を、彼のHIStoryのラストシーンに持ってきたのだ。

だとすれば、その意図や、思うところは察しがつく。彼の壮絶なアルバムの最後は、この曲でなければならなかったのだ。

残念ながら、チャップリンとマイケルはこの曲のパフォーマンスのあとのあまり幸福とはいえない境遇も重なってしまう。チャップリンは、「共産主義的だ」として国外追放になり、マイケルはHIStoryの8枚目のシングルとなるはずだったスマイルが、発売直前に中止になり、その後ソニーとの泥沼の戦争に突入していく。

どちらも結局は、社会の仕組みに抗おうとして、社会の仕組みにもみ消され、つぶされていったのだろうと思う。スマイル、は、やはり悲しい歌。悲しすぎる歌、だからこそ美しい歌。

歌詞 elyrics.net
posted by LightWing at 10:17 | TrackBack(0) | HIStory | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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