2013年07月04日

Money(1995年)

カネ、カネ、カネ、、、今の世界で流通するカネがなぜ汚いのか。闘う彼の怒りをこめたメッセージ。人一倍カネに取り巻かれ、そのネガティブなパワーが引き寄せる悪意に翻弄されたであろう彼は、たぶん、その本質をみてしまったんだろう。

目を背けてはいけないと思う。

Money, Money
カネ、カネ

Lie for it, Spy for it, Kill for it, Die for it
そのために欺きもする、そのために諜(うかが)いもする、
そのために殺しもする、そのために死にもする


spyって日本語を当てると「諜」という字になる。うかがう、と読む。

So you call it trust, But I say it's just
信用だというけど、俺に言わせればそれはただの
In the devil's game of greed and lust
強欲と色欲の悪魔のゲーム


trustは信用取引、信用経済の「信用」。経済は貨幣の裏づけのある金本位制から、「信用」だけを裏づけにする「信用経済」に移行している。でも信用って何だろう?紙切れを価値のあるものと信じる、それが信用。それが世界に何を引き起こしただろう?そんな「信用」に国の運命をリンクさせた結果、何が起こっているだろう?

They don't care, They'd do me for the money
やつらは気にもとめない、カネのために俺をやることなど
They don't care, They use me for the money
やつらは気にもとめない、カネのために俺を使うことなど


They don't careはThey don't care about us でもでてきた表現。まったく気にも留めない、どうでもいいということ。相手の幸せを願うがゆえに、きちんと相手をみて、相手の状況を気にかけるのが愛。don't careは
その対局。別に俺に何をしようと、俺を利用しようと、やつらは別に気にもとめない。カネのためならば。

So you go to church, Read the holy word
教会に行って聖なる言葉をお前はよむ
In the scheme of life, It's all absurd
けどお前の人生は、すべて道徳に反してる


見かけは、普通の市民として、キリスト教を敬い、聖書を読む。けど、実際はどうなのか。悪魔は、あからさまに悪魔の顔などしてはいない。そして悪魔の狂気は「普通の人」にも入り込む。

They don't care, They'd kill for the money
やつらは気にもとめない、カネのために殺すことなど
Do or dare, The thrill for the money
やるかやられるか、カネのための恐怖


doは、まさに日本語で「やる」という感じだと思う。何をするのか、は状況次第、の含みを持たせる。けれどよからぬことであることは間違いない。do or dareはやるかやられるか、喰うか喰われるか、そんな感じ。弱肉強食。そういう世界だ。

thrillはぞくぞくする。ぞくぞくする恐怖、の場合と、ぞくぞくするような喜びの二面がある。カネのあるものには、喜び。無いものには恐怖。ほんとはどっちの意味もある。

You're saluting the flag, Your country trusts you
お前は国旗に敬礼し、国家はお前を信頼してる
Now you're wearing a badge, You're called the "Just Few"
お前は勲章を身につけて、選ばれし人、と呼ばれてる
And you're fighting the wars, A soldier must do
そして戦争で闘ってるが、それは兵士には義務になる


国家に忠誠を誓うポーズで、国家からの信頼を勝ち取る。つまりはみんなの信頼も勝ち取る。そして立派な人と呼ばれ、「選ばれし者」なり、戦争に行く。輝かしく注目されるエリートとして。けれど、a soldierとしか呼ばれない、名もなき「選ばれなかった人」にも、その義務は強制されるのだ。そして前線で戦って死ぬのは、a soldierたちだ。

なぜ、ここで、突然こんな話がでてきたのか。ここでのyouはカネを持つ人。略されてはいるけれど、カネで国家の信用を買っているのだ。その結果戦争になる。きちんと歴史をみればすぐわかる。過去の強国の戦争は利益争奪戦。無辜の人々から土地を奪い、無辜の人々から搾取する。搾取する土地を争って、強国同士が戦う。それは別に過去の話ではない。

そして、よくみれば、このモチーフはblack and white のラップの部分など、他の曲にもでてきている。マイケル・ジャクソンが訴えたかったこと、気づいて欲しかったことなのだ。その想いを受け取ってあげることはできるだろうか。

I'll never betray or deceive you my friend but
友よ、決して俺は君を裏切らない、俺は君を欺かない
といいながら
If you show me the cash, Then I will take it
俺にカネをみせれば、俺は受けとると思ってる
If you tell me to cry, Then I will fake it
俺に泣けといったら、俺は泣くふりもすると思ってる
If you give me a hand, Then I will shake it
俺に手を差し出せば、俺はその手を握ると思ってる


カネで何でも動く。カネで何でも買える。カネで何でもできる。カネ、カネ、カネ。彼らには、それは当然の理屈なのだ。当然、俺もその理屈に従うと思っている。そして当然、自分もそうする。

You do anything for money
お前はカネのためなら何でもする

Anything, Anything, Anything for money
何でも、何でも、カネのためなら何でも
Would lie for you, Would die for you
俺を偽り、俺を殺し
Even sell my soul to the devil
俺の魂を悪魔に売りさえする

Anything, Anything, Anything for money
Would lie for you, Would die for you
Even sell my soul to the devil


Insurance?
保証?
Where do your loyalties lie?
君の忠誠心は偽りなのかって?
Is that your alibi?, I don't think so
それは君の難癖だって?俺はそうは思わない


そんなことを言えば人は疑う。そう、たぶん、ファンとして、この歌詞を読んでいる人さえも。Insuranceは当然「保険」の意味合いを強く想像させるためにでてきているんだろう。起源は互助なのに、結構そうではなくなっている。そういう皮肉。そして、何につけ、「保障」を求める現代社会への皮肉もあると思う。

You don't care, You'd do her for the money
お前は気にとめもしない、カネのために彼女をやることなど
Say it's fair, You sue her for the money
それが正義だといい、カネのために彼女を訴える
Want your pot of gold, Need the Midas touch
壷一杯の金を欲し、ミダスの力を欲し
Bet you sell your soul 'Cause your God is such
お前の魂を売る、お前の神はそんなやつだ


ミダスはギリシャ神話にでてくる、触ったものが何でも金になってしまう王様。カネの亡者にはその力は憧れだろう。けれど、この王は結局、この力が空しいものであることに気づき、この力を失うことを願うのだ。カネがあったって、買うべきものがなければ意味がない。そしてカネは強欲をひきつける。ミダスをわざわざ出してきたのは、そういうマイケル・ジャクソンの皮肉であり、「悔い改めてくれ」という願いだろう。

You don't care, You kill for the money
お前は気にもとめない、カネのために殺すことなど
Do or dare, The thrill for the money
やるかやられるか、金のための恐怖


Are you infected with the same disease of lust, gluttony and greed?
大食・貪欲、君たちは欲望という名の同じ病にかかっているのか?
Then watch the ones, With the biggest smiles, The idle jabbers
満面の笑みを浮かべ、意味のわからないことを放しながら近寄る奴等に気をつけろ
'Cause they're the backstabbers
彼らはきっと裏切るのだから


gluttony(大食)、greed(貪欲)は神が戒める7大罪に入っている。大食は中でももっとも重たい罪だそうだ。たぶん、人の食べ物を奪うからだろう。それは人の命を奪うことだから。そして貪欲は三番目。これはふたつとも7大罪の中でもとりわけ重罪。もっと、もっと、もっと、もっと。とめどない欲望はどちらも同じ。

ちなみに7大罪の他の五つは lust(色欲)、pride(傲慢)、envy(嫉妬)、怒り(wrath)、怠惰(sloth)。最初のほうで、the devil's game of greed and lustといっているのもここから来てる。この言葉、結構他の歌詞にもでてくる。

If you know it's a lie, Then you will swear it
それが嘘だと知っても、神に誓う
If you give it with guilt, Then you will bear it
それが罪だと知っても、実行する
If it's taking a chance, Then you will dare it
それが賭けだとしても、やってみる

You do anything for money


わかってて、やってる。確信犯。

Anything, Anything, Anything for money
Would lie for you, Would die for you
Even sell my soul to the devil

Anything, Anything, Anything for money
Would lie for you, Would die for you
Even sell my soul to the devil
(3回繰返し)


You say you wouldn't do it for all the money in the world,
世界中のカネをつまれても、そんなことしないと君はいう
I don't think so
そんなの嘘だね
If you show me the man, Then I will sell him
俺を人にあわせれば、俺はそいつを売ると思ってる
If you ask me to lie, Then I will tell him
俺に嘘をつけといえば、俺はそいつにもそういうと思ってる
If you're stealing with God, Then you will hell him
お前は神さえ欺き、地獄につきおとそうとするだろう


You do anything for money

(8回繰返し)
Anything, Anything, Anything for money
Would lie for you, Would die for you
Even sell my soul to the devil


マイケル・ジャクソンは、この歌を聞く人に憎しみを訴えたかったのではない。彼の暗い気持ちを共有してほしかったのでは決して無い。そう思う。この曲にそうした意図ととるならば、それは、プリズンバージョンの
They don't care about usを拒否し、block and whiteのパンサーパートを拒否することと根は同じだと思う。

マイケル・ジャクソンのこうしたネガティブな意味合いの歌を避けてはならない。明るい天使の側面だけをみて、彼の暗い戦士の側面をみないことは、結局彼を受け入れないことになる。そして彼が魂を込めて送った、重要なメッセージを見落とすことになる。

愛に溢れた彼がなぜここまで怒りを爆発させるのか。それが、自分だけではなく、すべての人を不幸にするからだ。

この歌のバックコーラスには、大富豪たちの名前が入っているといわれている。それがこうしたカネ本位の世界を作り上げているのだと解釈する人もいる。真偽なんてわからない。カネにまみれた世界の象徴としてそうした言葉を入れているととっても構わないと思う。

けれど、ちょっと調べればすぐわかることがある。

昔は各国の国王が、領主として人民を搾取した。そうした権力は革命で流された多くの血と引き換えに封じられた。独立宣言も、近代憲法も、そうした権力封じの武器。

けれど、現代は封じられた王権にかわり、カネをもつものが君臨する。憲法も法律も、所詮一国家のしくみ。国家の枠を抜けられない。だから、国家に縛られない多国籍企業が得をする。それをコーポラティズム、企業至上主義という。(この言葉も、企業が主権を握って、世の中をよい方向に積極的に動かして行こう、という意味合いであったこともあるのに。)タックスヘブンなんて庶民には関係ない。恩恵はカネのあるものだけが受け取れる。そんな金持ちがさらに富むシステムなんて山ほど仕組まれてる。そうして得た利益で、またロビー活動を繰り広げ、自分の利益誘導の仕組みを作っていく。そんなの秘密でもなんでもない。ミニチュア版の構図は国内にだっていくらもある。この歌はそうしたものに対する示唆だ。

けど、マイケル・ジャクソンが訴えたかったのは、そうした個別の事象だけではないと思う。結局、マイケル・ジャクソンが渾身の力で訴えたかったのは、賢くなれ、自分の目でものを見て、自分の頭で考えろ、ということだ(そしてその先には、自分で動くんだ、自分が変わるんだ!という訴えがある)。これは彼の局の根底に流れるメッセージの一つ。

だから彼はその対局にあるものを全力で糾弾するのだ。テレビでみたことをそのまま信じる人々、無関心な人々。それらは何度彼の歌詞で描写されただろう。その訴えは、マイケル・ジャクソンの全世界への「愛」、全世界の幸せを願う想いの表出だと思う。この曲もそうした彼の願いの一つ。

そして、「普通の人」に容易に入り込む「悪魔」への武器も「愛」なのだ。愛をもてば関心をもつ、関心をもては、自分の目で見て、自分の頭で考える、そして賢くなる。そして、よきもののふりをして、紛れ込む邪なものを見分けるものさしも愛なのだ。

2013/9/5 訳一部修正

参考にさせていただいたページ:
ミダス王の話
マイケルの遺した言葉/マイケル・ジャクソン氏の歌詞の日本語訳詞集
Michael Jackson – Money Lyrics
posted by LightWing at 14:10 | TrackBack(0) | HIStory | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。