2013年06月11日

Black or White (1991年)

この曲も、一見軽快でいながら、マイケル・ジャクソンの強い怒りが現れた、言葉の理解なしでは全くイメージが掴めない曲。ああ、マイケル・ジャクソンのアイデンティティは黒人なのだなあと思う曲。

有色人種は、ついこの間まで表向きも全く人ではない扱いをはっきりうけていた。米国で黒人解放運動に人生を捧げたマルコムXの暗殺は1965年、マーティン・ルサー・キング暗殺は1968年。彼らの経験した悲惨な境遇はwikipediaなどでも読むことができる。初の黒人市長誕生は1967年、BADの下敷きとなったハーレム出身の少年の悲劇は1987年。白人以外の大統領は2008年を待たなくてはならないが、それでもバラク・オバマは母は白人である。マイケル・ジャクソン自身、MTVには黒人は出られない、という慣例を、同年齢のプリンスなどとともに押しのけてくる必要があった。

この曲が書かれた1991年には、白人警官が無抵抗な黒人ロドニー・キングに暴行を加えたとされたことに端を発したロス暴動が発生している。

この曲は、そんな背景の中、見かけは穏便だけれど、かなり強烈なメッセージが込められている。そして、それは曲そのものよりもPVのほうに色濃くでている。

written by Michael Jackson

I took my baby on a Saturday bang
僕は大切な人を土曜のパーティーに連れて行った
Boy, is that girl with you?
坊や、彼女はお前の連れなのか?
Yes, we're one and the same
そうだよ、僕らの心はひとつ、同じ想いをもつもの同士


「僕」は多分黒人で、誰もが羨むような美しい白人女性を連れてパーティーに行く。
多分白人の男性が聞く「お前、その娘お前の連れなのか?」
僕はその通り、と返す。彼女と僕は心を完全に通わせているんだ。
the sameは同じ種類の人間、同じ想いを持つ人間同士とうことだろう。
同じ想いとは人種なんか関係なく、相手の人格を尊重・尊敬できる考えの持ち主、ということだろう。

Now I believe in miracles
僕は奇跡を信じてる
And a miracle has happened tonight
そして今夜奇跡が起こってる
But, if you're thinkin' about my baby
けどね、僕の大切な人に想いを寄せるなら
It doesn't matter if you're black or white
君が白いか黒いかは関係ないよ


人種を超えて信頼を築くこと、それがここでいう奇跡だろう。
それは可能だと僕は信じているし、現に今晩、僕と彼女はそれを証明している。
そして僕は「その娘はお前の連れなのか?」と聞いた白人男性に言うのだ。
「僕の大切な人のハートを奪おうと思うなら、中身で勝負してみろよ。
 彼女はお前が白人だからって、(黒人の)僕より優先したりしないぜ。」

「その娘はお前の連れなのか?」なんて失礼な質問には、言外に、白人は白人同士が相応しい、という人種差別の意識がにじみ出ている。白人の俺は、黒人のこいつより、彼女に相応しいはずだ、この質問した人物には人格の卑しさが現れている。「僕」の大切な人は、そんな偏見を全く持たないからこそ、僕と信頼関係を築いている。そしてそんな彼女は何よりも信頼・尊敬できる人格を重視するだろう。「偏見を持ってて、それに気づきもしないような卑しいお前なんか、相手にされないぜ」これは僕の強烈な皮肉である。

They print my message in the Saturday Sun
僕の言ったことは SATURDAY SUN に載った
I had to tell them I ain't second to none
僕は別に特別なわけじゃないと、教えなくちゃいけなかったよ
And I told about equality
そして平等について話したよ
And It's true either you're wrong or you're right
きみの考えがどうあれ、これは真実さ
But, if you're thinkin' about my baby
けどね、僕の大切な人に想いを寄せるなら
It doesn't matter if you're black or white
君が白いか黒いかは関係ないよ


そんなことを言ったら、週刊誌に載ってしまった。SUNはイギリスの大衆紙、PVでこのフレーズのときにマイケル・ジャクソンはタブロイド紙を手にしているので、多分そうだろう。SATURDAY SUNはそれを思わせる架空の新聞のことではないかと思う。

second to none は誰の二番手にもならない、つまりダントツの一番手、ぬきんでた人の意味。しかしここでは否定形なので、「僕は別にぬきんでていない」。そしてそれを彼らに教えなくてはならなかった、と言っている。

なのでこの文章は、人種を軽々と超えて奇跡を見せた僕の発言と行動は衝撃的で、周りは僕を(おそらくは悪い意味も含めて)特別扱いするけど、別に僕は勇気があるわけでも、特別なわけでもない、これが自然なことなんだ、本来の人間の考え・行動なんだ、と偏見で頭が一杯の人たちに僕は説明しなくてはならなかった、ということなんじゃないかと思う。

そうとると、次の文章もしっくり来る。つまり、そんな偏見に満ちた人たちに僕は平等について説き、それをあなたがどういおうと、それが真実だ、と言っているのだ。

(Don't you bet!)
ちがうかい?


I am tired of this devil
こういう酷いヤツはこりごりだよ
I am tired of this stuff
こういうばかげたことはうんざりだよ
I am tired of this business
こういう話やめてくんないかな
Sew when the going gets rough
状況がまずくなったときに取り繕うような


もう、こういうばかばかしいことにかかわりたくないんだ!という僕。

devilは酷い人。stuffはくず、ガラクタ、ひどい話、ひどいもの。bussinessは用件の意味にとった。the goingは状況。sewはイマイチ不明だけれど、取り繕うにした。nativeでも「soなんじゃないの?」とか「sewでは意味不明」という意見があるみたいでよくわからない。

I ain't scared of your brother
君らの仲間なんか怖くない
I ain't scared of no sheets
マスコミに無視されたってかまわない
I ain't scared of nobody
僕は誰も恐れない
Girl when the goin' gets mean
どんな酷いことになったとしても


そんなことを聞いてくるようなマスコミ業界なんか怖くない、もしそれで状況が悪くなったとしても、といううんざりした僕の言葉。

sheetsは紙面。no sheetsは記事として取り上げられない、マスコミに無視される。meanは意地悪な、酷い。
(Rup)
Protection, for gangs, clubs and nations
暴力団に身内の集まり国家の集まりのための「防衛」
causing grief in human relations
人との絆に悲しみ振りまく
It's a turf war on a global scale
世界規模での陣取り合戦
I'd rather hear both sides of the tale
双方の言い分聞いてみたいね
See, It's not about races, just places, faces
ごらんよ、人種の争いじゃない、ただの縄張り、ただの面子
Where your blood comes from is where your space is
君の出自は君のいる場所
I've seen the bright get duller
俺は見てきた、輝きは濁った
I'm not going to spend my life being a color
俺は「黒人」で人生終わる気はない


特定の暴力勢力や、特定の身内だけの集まり、国家の集まりの利益を守るだけの「防衛」は、人と人との関係に悲しみを呼び起こす。特定の身内だけの集まり、というのは業界団体であったり政治結社であったり、などなんらかの利益を同一にする団体のことだろう。

でもそんな防衛は所詮、世界規模での陣取り合戦、人種を発端にした争いのフリしてるけど、実は縄張り争いとか、面子争いとか、そんなことでしかない。where your blood come from は、自分の血の出自、つまり自分の人種。where your space isは自分の場所があるところ、つまり自分の居場所。つまり本来自分たちの人種が発生した場所が自分が本来いる場所だと言っているのだろう。アフリカンアメリカンならそれはアフリカか。それをはみ出て拡大を続けている勢力がある。

そして黒人のその場所はかつては輝いていたのに、今は鈍く輝きを失って濁ってしまっている。それを僕は見てきたのだと。アフリカ。その通りだろう。

そこでは、別に黒人が黒人、といわれて差別されることは本当はない。だって回り皆黒人だから。それがI'm not going to spend my life being a color 自分の人生を黒人といわれて過ごす気はない、の意味だろう。being a colorは黒人という人種や黒い肌のことではなく、黒人というレッテルを張られて差別されることだろう。

Don't tell me you agree with me
when I saw you kicking dirt in my eye
影で僕に泥はねかけながら
賛成だよ、なんていわないでくれよ
But, if you're thinkin' about my baby
けどね、僕の大切な人に想いを寄せるなら
It doesn't matter if you're black or white
君が白いか黒いかは関係ないよ


I saw you kicking dirt in my eye、相手は砂を僕に向かって蹴飛ばしていて、その砂は僕の「片目」に向かっている。つまりは相手は僕に酷いことをしているのだ。しかもやってることは目つぶしだから、僕にわからないことを影でやっている。しかし、砂が入ったのは片目だから、僕はもう片方の目で犯人をみることはできる。

良識のある振りして言葉だけで「そうだね、人種差別はけしからんねぇ」なんて賛成したフリをしないでくれ、影で僕に酷いことしているくせに、そういうことだろう。

I said if you're thinkin' about my baby
いったろ、僕の大切な人に想いを寄せるなら
It doesn't matter if you're black or white
君が白いか黒いかは関係ないよ

I said if you're thinkin' about being my brother
いったろ、僕の仲間になるなら
It doesn't matter if you're black or white
君が白いか黒いかは関係ないよ


It's black, It's white
黒、白
It's tough for you to get by
君はどうしてもこだわるんだね。
It's black, It's white, Whoo
黒、白、ヒュー!
It's black, It's white
黒、白、
It's tough for you to get by
君はどうしてもこだわるんだね。
It's black, It's white, Whoo
黒、白、ヒュー!


get byはやり過ごす。It's touchは難しい。だから、あなたにとって黒か、白か、やり過ごすのは難しい、の意味。

さて、出回っているPVには、曲が終わるとPVも終わってしまうものがおおい。しかし本来このPVには続きがある。それがパンサーパートと呼ばれるパート。豹がマイケル・ジャクソンに変身し、夜の街でたった一人で踊りながら、窓や車を叩き壊す、というパートだ。

音楽もなにもない夜の街で、マイケル・ジャクソンがひたすら KKK とか、人種差別的な言葉をかいた窓ガラスや車のウィンドウを叩き割る。あまりに過激として、このパートは切られてしまうことが多いが、ポップな歌に隠したマイケル・ジャクソンの怒りが集約されている。けれど、ズボンのチャックを上げるしぐさ、など、あまりにもそれは、理解に困難をきわめる表現となっている。ただただ、激しい怒り、それ以外のものが受け取れない。

そしてパンサーパートからもカットされてしまう最後の最後のことば。

Prejudice is Ignorance
偏見とは無知である


Prejudice is the child of ignorance.という表現で18世紀からあった言葉らしい。完全な無知よりも中途半端な知識のほうがなおたちが悪い、という人もいる。

たぶん知識の過多は本質に関係なく、思い込み、という罠からどれだけ自由でいられるか、ということなのだと思う。現実的な方法が思い込みを打ち消すほどに知識を増やすことだというだけではないか。

ここでも結局かぎは一つなんだと思う。つまり正しい興味。すなわち愛なのだ。

2013/8/23 歌詞一部修正、追記記載

参考にさせていただいたページ:
自然のしずく、言葉の大海
マイケル・ジャクソンの"Black or White"のPVに出てくるroyal arms hotelの意味を教えてください。
マイケルのココロ--FOREVERLAND
追記

I ain't second to none をここでは、二重否定=肯定にとって、「僕は特別ではない」と訳しているのだけれど、二重否定を単純否定の強調と取っている訳が多い。

英語の場合の二重否定は肯定の意味ではないことも多く、どっちになるかは時と場合によるらしい。基本的には紛らわしいので正しくない英語とされており、こういう表現を使うのはあまり教養が高くないとみなされてしまうのだそうだ。BADのPVにでてくる you ain't nothingなどは完全に二重否定でも否定の強調以外に取る人がいない表現。これはもう、汚くて標準ではない言葉。わざと使っているのだ。nativeにはとても頭が悪く聞こえるんだろう。

ただ、block and whiteの場合は微妙かな、と思う。もし二重否定を肯定ととるなら、「僕は特別なんだ」という優位性の強調ではなく、「僕は誰にも劣っているわけではないんだ」というsecond to noneの本来の言葉のニュアンスを生かした、訳のほうがいいと思う。そのほうが平等性を強調する訳になる。

ここでマイケル・ジャクソンが言いたいのは、黒人だからといって、僕は劣っているわけではない、白人と同様に尊重されるべき、独りの誇り高い独立した人間なのだ、ということであり、その白人より僕が優れている、といいたいわけではないと思う。

posted by LightWing at 03:08| Dangerous | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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