2013年06月02日

You are not alone (1994年)

本当は、HIStoryの後なので、They don't care about us に行きたかったんだけれど、思いの外、てこずっている。その間にこっちが先になってしまった。社会的なメッセージ性はないので、これは少し番外編。この曲はマイケル・ジャクソンが書いたものではない。でもマイケルの内面を垣間見られる曲だと思う。

You are not aloneは1994年発表の、甘い、甘いラブソング。もう、スーパースターの魅力をこれでもか、と女性ファンに見せ付ける。HIStoryツアーではこの歌にあわせて観客からピックアップされた女性がステージにあがり、歓喜するような演出。マイケルの甘い声は、ファンの心をとろかすのに充分すぎる。

PVはもステージで歌うマイケルをメインに、当時の妻、リサ・マリーとマイケルがギリシャ神殿のようなセットの中で、腰に布を一枚まとっただけの姿で微笑み会うカットが挟まる、美しいけれど、どこか官能的なもの。珍しく肩より上に短く揃えたストレートヘアでギリシャ神話の少年ようなマイケルは、ただ、ひたすら幸せそうに微笑む。ステージ上のマイケルも、珍しく素肌に直接ジャケットを羽織るいつもと違う路線。

そして想像を掻き立てる意味深な歌詞。

自分のもとから離れていった女性を、彼が焦がれている曲であることは間違いない。けれど、それがどういうシチュエーションなのかは今一歩はっきりしない。彼女が去っていった理由はなんなのか?亡くなってしまったのか?単純に振られたのか?You are not aloneは彼の願望なのか、真実彼女も彼を思っているのか。どうとでも取れるようにわざと謎かけしてはあるのだろうけれど。

Another day has gone
I'm still all alone
How could this be
That You're not here with me
You never said goodbye
Someone tell me why
Did you have to go
And leave my world so cold

また一日が過ぎていく
僕はまだこんなに孤独なままで。
こんなことってありえるのか
あなたがここにいないなんて。
さよならもいわなかったね。
誰か教えてくれよ
あなたが去らなければならなかったわけを。
僕の世界をこんなに冷たく取り残したままで。


愛する人が、理由もいわず去っていき、落ち込んでいる「僕」の嘆き。How could this beは、こんなことってありえるのか!彼女が去っていくなんて想像すらできなかった、一人過ごす日なんて想像できなかった、という僕の呆然とした心情。それくらい僕は彼女との絆を確信していた。

けれど、彼女はhave to go、去らなければならなかった、と彼は考えている。彼は、きっと何か彼女は去らなくてはならない理由があったのだと思っている。でも、その理由は、彼にはわからない。だから彼はどうすることもできずにいる。

彼の心の表現は、ここではcoldだけれど、PVではからからに干上がった大地で現される。一瞬水豊かな緑の風景が表れ、それはすぐ消えて大地にもどり、満たされていた日々を彼が思っている幻影だと気づく。

Everyday I sit and ask myself
How did love slip away
Something whispers in my ear and says

毎日すわって自問する
いつの間に愛は僕の手をすべり落ちていったの?
耳の中で何かが囁き、そして言う。


毎日じっと座って、どうして彼女は去っていってしまったのか、と自問する日々。あんなに心通いあっていたのに。そんな気持ちなのだろう。

手から滑り落ちたloveは彼女の愛ではなくて、愛する人=彼女そのもの、または彼女と共に過ごした日々だろう。彼は彼女の心を失った(つまりは、嫌われた、心が離れた)と思っていないと思う。彼と彼女の交流は深いものだったから、彼にはその確信があるのだろう(そうでなければ、この後のフレーズがすべて、振られた男が自己妄想に浸るだけの痛い話になってしまう、、、)。

That you are not alone
For I am here with you
Though you're far away
I am here to stay

ひとりじゃないわ。
私はあなたとともにいるから。
たとえあなたは遠く離れていても、
私はずっとあなたといるのよ。

That You are not alone
For I am here with you
Though we're far apart
You're always in my heart
You are not alone

ひとりじゃないわ。
私がいるから。
たとえ私たちは離れていても
あなたはいつも私の心の中にいる
ひとりじゃないわ。


毎日呆然と日々をすごす彼に声が響く。響いてくるのは彼女の声だろう。Youはここにいる「僕」。彼女の声は言う「あなたはひとりじゃないのよ、私はあなたとともにいるから。たとえあなたは遠く離れていても、私はずっとあなたといるのよ。」と。これは願望なんだろうか、それとも本当の彼女の思いが届いたのか。

'Lone 'Lone
Why, 'Lone

ひとり、ひとり、なぜ、、、、ひとり


彼女の声が響いても、それは僕の心には届いていない。ひとりじゃない、という言葉を受け入れられない僕がいて、これはその悲しみの表現なのだろう。どうしてひとりなのか、彼女はともにいないのか。ただひたすら嘆いている僕がいる。

Just the other night
I thought I heard you cry
Asking me to come
And hold you in my arms
I can hear your prayers
Your burdens I will bear
But first I need your hand
Then forever can begin

この前の夜に
僕はあなたが泣く声を聞いた気がした。
あなたが僕を呼んだから、
僕はあなたを抱きしめた。
あなたが祈る声が僕には聞こえる。
あなたの背負った荷物、僕なら耐えられる。
でもそれにはあなたの手が必要なんだ。
そうすれば永遠を始めることができるんだ。


このパラグラフは彼が彼女を必要としているだけでなく、彼女もまた彼を必要としていて、二人がお互いに支えあっていることの描写だろう。彼女もまた、彼を思って泣いているはず、そう彼は確信している。

彼女が彼を求めて泣いているのは、単純に彼が恋しいからではない。Your burdensは彼女が背負っている苦悩、それを分かちあって支えてくれるのは彼しかいないと、彼女は知っていて、だから彼女は辛いときに彼を必要として泣くのだ。そして、彼も、I will bear、あなたの苦悩なら、僕には耐えられると、受けている。

けれど彼が、彼女とともに、苦難を引き受けて生きていくには、まず、彼には彼女が必要なのだ。二人手を携えるなら、永遠に二人すすんでいけると、彼はそういっている。

彼女の祈りと重荷は現在も続いている。彼女が死んでしまったのだったら、こういう表現にはならないのではないかと思う。やはり彼女は生きてどこかに離れているのだと思う。だからこそ、彼女が受け入れてくれさえすれば、永遠に幸せに生きていけるんだ、二人の未来が開けるんだと彼は思っている。けれど、彼女は決してそうはしないのだ。

Everyday I sit and ask myself
How did love slip away
Something whispers in my ear and says

毎日すわって自問する
いつの間に愛は僕の手をすべり落ちていったの?
耳の中で何かが囁き、そして言う。

That you are not alone
For I am here with you
Though you're far away
I am here to stay

ひとりじゃないわ。
私はあなたとともにいるから。
たとえあなたは遠く離れていても、
私はずっとあなたといるのよ。

That You are not alone
For I am here with you
Though we're far apart
You're always in my heart
And You are not alone

ひとりじゃないわ。
私がいるから。
たとえ私たちは離れていても
あなたはいつも私の心の中にいる。
だから、ひとりじゃないわ。


Ah...,
Whisper three words and I'll come runnin', and I,
And girl you know that I'll be there!
I'll be there!

ああ、愛しているとささやいて。
そしたら、僕は駆けていく。
僕は、あなたの、、、
わかってるよね、あなたのもとへ。
あなたのもとへ。


ここは、最後のフェーズでマイケルが伸びのある声で絶叫するパラグラフ。three words とは I love you。そうあなたが言ってくれさえすれば、すぐにでも追いかけていくのに。必死の思い、だけど、やっぱり、彼女はそれを受け入れない。

You are not alone
For I am here with you
Though you're far away
I am here to stay

ひとりじゃないわ。
私はあなたとともにいるから。
たとえあなたは遠く離れていても、
私はずっとあなたといるのよ。

You are not alone
For I am here with you
Though we're far apart
You're always in my heart

ひとりじゃないわ。
私はあなたとともにいるから。
たとえ私たちは離れていても
あなたはいつも私の心の中にいる。


彼の必死の叫びは届くことはなく、そして、また同じ声が響く。あなたの一緒にいたい、という願いは受け入れられないけれど、私はあなたと一緒にいるのよ。だからあなたは一人じゃないのよ、と。彼女の声はあくまで冷静だけれど、ここで歌声は強くなる。何かの変化が起きている。それは多分彼の心の中の変化なんだろう。

(You are not alone) You are not alone
(For I am here with you) I am here with you
(Though you're far away) Though you're far away
(I am here to stay) You and me
(You are not alone) You are Always in my heart!
(For I am here with you)
(Though we're far apart)
(You're always in my heart)
(You are not alone) Not alone oh!

(ひとりじゃないわ)ひとりじゃないんだね。
(わたしはずっとあなたといるのよ)僕はあなたとともにいる。
(あなたは遠く離れていても)あなたは遠くはなれていても
(私はずっとあなたといるのよ)あなたと僕は。
(ひとりじゃないわ)あなたはいつも僕の心の中にいる
(私はあなたとここにいるわ)
(たとえ私たちは離れていても)
(あなたはいつも私の心の中にいる)
(あなたはひとりじゃないわ)ひとりじゃない、ああ!


()はコーラス、それに続くのはマイケルの声。

ここでは、コーラスにマイケルの叫ぶような声がかぶる。コーラスは彼女の声、マイケルは落ち込んでいた「僕」の声、ここで彼女の心は彼と通い合った、そういう表現なのだと思う。彼は気づいたのだ。ああ、彼女は離れているけど、体が離れているのと、心が離れているのは別のこと。僕は一人ではないのだと。僕の中にあなたはいて、あなたの中には僕がいるのだと。

You are not alone, you are not alone.
Say it again, you are not alone,
you are not alone.
Not alone, Not alone!
You just reach out for me girl
in the morning in the evenin'
Not alone, not alone,
you and me, not alone, Oh!
Together, together,
God done being alone, god done being alone.

あなたはひとりじゃない、あなたはひとりじゃない
もう一度いって、ひとりじゃないって、ひとりじゃないって
ひとりじゃない、ひとりじゃないんだ!
あなたの救いの声が僕に届く、朝に、夜に
ひとりじゃない、ひとりじゃない
あなたと僕、ひとりじゃない、ああ!
ともに、ともに
神は孤独を終わらせ給う、神は孤独を終わらせ給う


コンサートの演出では、観客に向かって一緒に歌うよう誘いかけるところなので、単にyou are not aloneのパラグラフが繰り返されるだけだけれど、PVなどではここはマイケルが一人叫ぶパート。彼女の心は彼に届いて、かれは悟ったのだ。ひとりじゃないと。彼女は離れているけれど、心はちゃんと彼とつながっている。だから、かれは孤独だと思う必要はないのだ。PVではここのパラグラフで、今まで寂しそうに歌っていたステージ上のマイケルが一瞬ぱっと笑顔をみせるようなカットが挟まれる。

reach outは救いの手を差し伸べるという意味がある。孤独に沈んでいた彼に、朝に、夜に、その孤独を救う彼女の声が聞こえる。ひとりじゃないのよ、あなたは孤独なんかじゃないのよ、と。最後のほうはそう気づいた彼の叫びだろう。離れていても、彼女と僕はつながっている。その意味を理解したのだ。けれど、それは、彼女と一緒に暮らす、体が一緒にいる、ということは叶わない、と彼が理解したということでもある。それを彼は諦めて、一つ成長したのだろう。

最後のフェーズには突然神が現れる。God done been alone。神は孤独を終わらせ給う。彼女と一緒にいる、普通の恋愛としての愛を失い、孤独だと思っていた彼が、そばにいなくても互いを思い合い、支えあう、そうした愛に気づき彼女への想いを昇華させ、孤独を退けた。そういう魂の成長が、突然Godがでてきた意味じゃないかと、そう思う。

わからないのは、神殿で女神のようなリサ・マリーと微笑んでいたマイケルがここで一瞬、近づいてくるリサ・マリーの顔を振り切って、パッとカメラのほうを向くカット。リサ・マリーも合わせてはっとしたようにカメラのほうを向く。リサは、彼の夢の中の、彼が理想とした幻影の彼女?それに気づいたということなのか。その後も二人が寄り添うカットは挟まれるが、心なしかリサ・マリーは苦々しそうな顔をする。ああ、気づいてしまったのね。そういうことなのか。別のときに見たら、また解釈がかわるかもしれないけれど。


愛していることは相手の幸せを思うこと。そして愛していることと、結婚すること、ベットや暮らしをともにすることは別のこと。結婚していても愛していないカップルなどざらにいる。じゃあ、愛していれば結婚したくなるのか。本当はそれも、別物なのだ。結婚したい、相手といつも一緒にいたい、と思うのは執着。結婚しなくても、一緒にいなくても、相手を思い、支えあっていくことはできる。それを愛している、という。

ここにでてくる彼女は、やっぱりダイアナ・ロスではないかと思えてしまう。ダイアナ・ロスはマイケル・ジャクソンよりも14歳も年上だけれど、二人でいるときのマイケルがめろめろになっている映像はいくつも残っているし、若かりしころのマイケルは彼女を結婚相手とみていると公言してもいる。結局ダイアナ・ロスは他の男と結婚してしまい、それは叶わなかったけれど、マイケルは遺産管理をダイアナに託し、ダイアナはマイケルの子供の親権行使を検討するほど、二人の信頼の絆は固い。一時は本当に付き合っていた、という噂さえある。

付き合っていたかどうかはわからないけれど、公言しているくらいだから、マイケルは本当に結婚したかったんだろう。若かったマイケルはそれに焦がれたし、まじめな男ならそれを当然とも考えるのがむしろ常識だ。けど、ダイアナは違った。それがマイケルにはわからなかったのではないか。

ダイアナはマイケルを愛していたと思う。14歳も離れた、繊細で、利発な、才能溢れた少年は、ダイアナには大切な存在だったに違いない。けれど大切に思えば思うほど、結婚ということは考えられなかったのではないか。ダイアナはマイケルがまだ子供のころにはすでにマイケルとともに所属していたレコード会社の社長の子供(婚外子)を生み、数々の男性と浮名を流し、結婚・離婚も経験している。二度目の結婚にいたっては、この自分を盲目的に慕う年下の男を諦めさせるためではないかとすら勘ぐってしまう。

マイケルは混乱しただろう。ダイアナ結婚の翌年の「Dirty Diana」はやはり、ダイアナへの当てこすりにみえてしまう。マイケルにとって「ダイアナ」はダイアナ・ロスしかいないだろう。無関係、という言葉をイノセントに信じたとしても、わざわざダイアナにする意味が不明。そんなマイケルの当てこすりも、ダイアナは「Dirty Diana」を自分のコンサートのオープニングに使う、という対処でさらりとかわしてしまうのだけれど。

You are not aloneが書かれた年は、マイケルにとって受難の年。前年の幼児への性犯罪訴訟による屈辱的な体験。この受難は彼を崩壊寸前まで追い詰めたと同時に、いくつもの学びと変化をもたらしたのではと思う。愛は性や結婚とは違う、それは、マイケルが訴訟で訴えて理解されなかったことと重ならないか。

翌年、マイケルはリサ・マリーと電撃的に結婚。リサ・マリーとは長い付き合いで、マイケルもリサ・マリーも普通に愛しあってはいたようだ(それでも、二人はすれ違ってしまい結局2年で破局するのだが)。この曲はそのリサ・マリーとの結婚の年にかかれたものだ。これは、マイケルがダイアナへの自分の執着と、それでも愛は二人の間にあるのだ、ということに気づき、そのことを受け入れる決意を表しているのではないかと思う。そして、そばにいて、思ってくれたリサ・マリーに気づき、ともに歩くことを決めた。だから、彼女をともにPVをとったのではないだろうか。

愛は、マイケルが子供たちに寄せる愛と同じ、ただひたすら相手の幸せを思う心だ。けれど、こと男女になると恋愛、となって、執着と盲目とエゴを含む恋の部分と、寛容と冷静さと相手をひたすら思う心の愛の部分が混ざり合う。恋はきっかけではあるが、本当に必要なのは愛なのだ。

恋と愛とを区別すること、それが幸せの鍵であり、マイケル・ジャクソンを理解する一つの鍵ではないかと思う。

参考にしたページ:
Diana Ross History
マイケル・ジャクソンの秘めたる恋
リサ・マリー・プレスリー最初で最後マイケル・ジャクソンの死をTVで語る
Niknews マイケル・ジャクソン
posted by LightWing at 06:27| HIStory | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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